クロップとは、デジタルカメラで画像の1部分を切り出すことです。
語源のクロップ本来の意味は、農作物の収穫や刈り取りを意味するのですが、「写真画像という収穫の一部を切り取る」と言う意味で使われるようになって来たと思われるのでございます。
なお、クロップ撮影する事をクロッピングとも呼びます。
クロップはトリミングやデジタルズームと似ているけど、どこがどう違うのでしょうか?
確かに三者共に画像の一部を切り出すことには変わりないですよね?
タダ単にネーミングが違うだけでしょうか?
クロップの歴史を探れば、その謎も解けるのでございます。
クロップが初めて採用されたのは、NikonDX2というプロ向けの大きくてタフな一眼レフカメラです。
クロップ自体の仕組みは至って普通で、イメージセンサー(撮像素子)の中心部に近いデータを記録して、周辺のデータを切り捨てるというものです。
この話だけ聞くと、撮影時にトリミングしてるだけで、コンパクトカメラなんかに付いているデジタルズームとあまり変わりありませんね。
実はNikonDX2のクロップの目的は、ズームやトリミングではなく連続撮影速度を引き上げる事だったのでございます。
イメージセンサー(撮像素子)の周辺部のデータをカットすると言う事は、それだけ1ショットのデータが軽くなりますよね。
データが軽くなるとイメージセンサー(撮像素子)からの電荷の呼び出しが高速化するとともに、記録メディアへの書き込みも短時間で済むようになるのです。
その結果、連続撮影速度を引き上げるというのが、クロップの本来の目的なのでございます。
実際にNikonDX2は、1240万画像をクロップすることで記録画素数を680万画素におとし、連続撮影速度を秒間5コマから秒間8コマまで引き上げることに成功したのでございます。
さて撮影時にトリミングすることがクロップとも言えるのですが、トリミングは撮影後のレタッチや画像編集の時にクロップすることでもありますね。
それ以前にトリミングの目的は、写真の周辺部の余分な対象をカットすることで、フレーミングや構図を整える事です。
さらにトリミングは撮影後に行うので、タテヨコ幅のサイズの指定や、総ピクセル数の指定、さらに解像度の指定等を同時に行うことができるという利点があるのでございます。
次にデジタルズームは、クロップ同様にイメージセンサー(撮像素子)の中央部付近のデータを記録しますが、それは画角を狭くすることが目的なのです。
切り捨てた周辺部の大きさまで、中央部付近のデータを引き延ばして、あたかも実際の撮影レンズよりも望遠レンズで撮影したように見せかける技術なのでございます。
最後にまとめますと……
三者共に画像の周辺部を切り捨てて中心部だけを活用するので、同じモノであるように感じられますが、目的がそれぞれ大きく違うのでございます。
- 「クロップ」の目的:連続撮影速度の引き上げ(オマケとして望遠効果)
- 「トリミング」の目的:写真のフレーミングや構図の仕上げ
- 「デジタルズーム」の目的:画角を狭めて望遠レンズで撮ったように見せかける