ディストーションとは、歪曲収差(わいきょくしゅうさ)のことです。
これまたディストーションとはハリウッド映画のようなイカした名前ですが、直訳すると「歪み」、写真用語では「ザイデルの5収差」の一つである歪曲収差(わいきょくしゅうさ)のことを指すのでございます。
歪曲収差は直線がまっすぐに写らずに曲がって写る収差でありまして、画面の周辺に行くほど強く曲がっていくのであります。
曲がり方は次にあげる2種類に限られていまして、同じ画面上で両方が出ることは無くどちらかがでます。
- 樽型歪曲(たるがたわいきょく):「負の歪曲収差」とも呼ばれ、タルのように外側に膨らみます。
- 糸巻き型歪曲(いとまきわいきょく):「正の歪曲収差」とも呼ばれ、糸巻きのように内側に凹みます。
ところでディストーションの特徴は、単焦点レンズよりズームレンズの方に強く出ます。
つまりズームレンズは、単焦点レンズよりも歪曲収差を完全に補正しきれないようでございます。
焦点距離に関しましては標準レンズでは出にくく、広角側と望遠側に向かうほどにディストーションが強く出る傾向がございます。
一般的には広角レンズでは樽型歪曲が出やすく、望遠レンズでは糸巻き型歪曲が出やすいと言われております。
ディストーションは歪曲収差なので、球面収差のように絞りを絞れば改善されるのものではなく、レンズの設計に任せるしかございません。
そのディストーションを生かしたレンズとしては、魚眼レンズ(全周魚眼レンズ)があげられます。
このレンズは樽型の歪曲収差をワザと補正しないで超広角レンズ設計しているので、タルを通り越してボールのようにまん丸に写るのでございます。
しかし直線が少しでも歪んで写ると困る建築写真や商品写真では、ディストーションは非常に嫌われ者である存在なのでありました。