電気光学素子(電気光学結晶)レンズとは、電流を流す(電圧をかける)と、屈折率などの光学特性が変わるレンズです。

EO(Electro optical)素子とも呼ばれる、電気光学素子(電気光学結晶)でピント合わせをすると言うレンズなのでございます。


「そんな事が出来るのか?」と、おっしゃるのは、ごもっともで……

電流を流す(電圧をかける)と屈折率が変わる、電気光学結晶という結晶があるのです。

この結晶から、液晶をつくるのです。

そうすれば、あら不思議!電圧を変えることで、液晶の屈折率を変えてピント合わせをすることができます。

なのでレンズと言いましても、従来の光学ガラスを使ったレンズではなく、電気光学結晶から作られた液晶素子がレンズと同じ働きをすると言うことでございます。


「そんなレンズは見たこと無いぞ!」と、おっしゃるのも、ごもっともで……

現在はレーザーの発生器など、一部の光学機器で普及しつつある段階で、カメラのレンズとしては試作段階なのです。

Canonは、EOSシリーズ対応のEF300mmF4レンズに、電気光学素子(電気光学結晶)レンズを組み込んだ試作品を開発して特許の出願中です。

面白いのは、このレンズにおいての電気光学素子(電気光学結晶)レンズの役割は、AF(オートフォーカス)の高速化や描写力の向上が目的ではありません。

意外な事に、従来の手ぶれ補正機能では補正できなかった、高周波のブレを補正する技術に使われています。

つまり電気光学素子(電気光学結晶)レンズの、瞬時に屈折率が変化する特性を利用して、今まで補正しきれなかった三脚使用時のブレや車載カメラ等の手ぶれ補正に対応できるようになりました。

このような高周波のブレは、従来の機械的な手ぶれ補正の動きでは補正しきれなかったのです。

これは、特に動画撮影の手ぶれ補正機能としても期待できますね。


さらに最近NTTが、電気光学結晶の一種であるKTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)を用いた可変焦点レンズを開発しました。

可変焦点レンズというのは、ズームレンズのようなレンズです。

このレンズ、従来の光学レンズより屈折率が変化が、なんと!1000倍早いという恐ろしいレンズだそうです。


ただし、電気光学素子(電気光学結晶)レンズは、良い事だらけではありません。

欠点として、温度により液晶(レンズ)の透明度が変化する性質があることや、動作の寿命(1万時間など)があることが知られています。

その辺りが、カメラのレンズとしての製品化のネックになっているのではないでしょうか?

それにしましても「液体レンズ」同様、レンズの屈折率まで電気で制御してしまうとは、凄い時代になったものでございます。