フローティング機構とは、撮影距離に応じてレンズを動かす事で、収差を補正するためのシステムです。

収差とは、簡単に言えばレンズの欠点、つまり理想からのズレを指します。

ピントが甘くなったり、形が歪んだり、色が滲んだりする……アノ嫌がられている現象でございます。


通常収差は、画面の中心から四隅に向かうほど大きくなっていきます。

そこで収差を補正するために、何枚もの補正レンズを組み合わせたり、非球面レンズを使ったりしますが……

近距離撮影での収差の補正は、特別に難しいものがございます。

そこで、フローティング機構の登場となります。

なのでフローティング機構は、別名「近距離収差補正機構」とも呼ばれているのでございます。


肝心のフローティング機構の仕組みは、どのようなモノでしょうか?

それは、ピントを合わせるためのレンズ群とは別に、収差の補正のためのレンズ群動かすと言うものです。

レンズ群とは、複数のレンズを貼り合わせて一つの塊(グループ)にしたモノでです。

例えば、複数のレンズを前群と後群に分けて、それぞれ別々に移動させることができるように設計します。

そして、前群のレンズを動かしてピント合わせをさせて、その収差を後群のレンズを動かして補正する様に設計すると言う具合です。

さらに、収差の補正のために動かすレンズ群が、1つではなく2つあるもの「ダブルフローティング機構」といいます。


このようにフローティング機構を採用することで、レンズの1部を撮影距離に伴って移動させ、近距離から無限遠までの全域にわたって収差を補正させる事ができるのでございます。

そのため、マクロレンズや大口径のレンズは、レンズ構成の1部を撮影距離に応じて移動させて、収差をできる限り減らすように設計されています。

特にマクロレンズは、近接撮影時に出る収差を減らすために、積極的にフローティング機構を組み込んでいるモデルが多く見られます。

なお厳密に言いますと、フローティング機構のないレンズは、単焦点レンズであっても撮影距離によって焦点距離や開放Fが変化しているのでございました。