液体レンズとは、ホルダーに入った液体に電圧を加えることで、屈折率を変えるレンズです。
次世代の光学素子として注目されていますが、現在のところカメラのレンズとしての製品化はされていません。
ただし、顕微鏡や研究機器や産業機器の光学素子としては、徐々に普及しつつあります。
ちなみに「素子」とは、機器の構成要素で、それ自体の働きが全体の働きに対し重要な意味をもつものでございます。
さて、液体レンズをもう少し詳しく見ていきましょう。
液体レンズ自体は、日本を含めて世界中のメーカーから、既にモジュールとして製品化されて販売されています。
これは余談になりますが、「液体メガネ」なんてモノも開発されて市販されています。
なんと、透明樹脂でできたメガネレンズ内に、「シリコンオイル」が封入されているんです。
最大の特徴は、フレーム両脇のダイヤルを回し、オイルの容量を増減することで、自分自身で度数が調節できるという代物でございます。
災害時のメガネの代用や、アフリカなどのメガネやさんのない地域での普及が注目されているのでございます。
もちろん、カメラのレンズで使用される液体レンズは、このような単純なモノではありません。
多くの液体レンズは、ホルダーに「伝導性の水溶液」と「非伝導性の油」を密封し、水に電圧を加えることで水と油の境界面を変化させるというものです。
水溶液が電極に集まろうとし、油を押しのけて、油と水との接する面の形が変わるのです。
つまり屈折率を自在に変えることができるという技術で、焦点を移動させる事ができるので、カメラのフォーカスに利用できるというわけでございます。
液体レンズメリットは……
- ズーミングやピント合わせの際にレンズが動かない。
- 一枚のレンズで焦点距離を変化させる事ができる。
- モーター等の駆動部を必要としない。
- フォーカスの高速化。
- レンズの小型・軽量化が可能。
- 無音AFの(オートフォーカス)が実現。
などが、あげられます。
変わった利用法としては、SONYがフラッシュ/ストロボの照射角度を変えるズーム機構に、液体レンズの特許を出願しています。
同じくSONYは、広角から望遠やマクロまで使える、利便性の高い液体レンズを使ったズーム式フロントコンバージョンレンズを開発しています。
またOlympusは、従来のAFシステムを液体レンズの電圧制御に変換する、完全電子制御のマウントシステムの特許を出願しています。
このように、互換性を考慮した開発が進められているということは、そう遠くない未来に液体レンズが写真用レンズとして使われ始めることでございましょう。
それにしましても「電気光学素子(電気光学結晶)レンズ」同様、レンズの屈折率まで電気で制御してしまうとは、凄い時代になったものでございます。