マルチショットとは、複数回撮影した後それらの画像で一コマの写真を作り出す、デジタル写真の撮影方法の1つです。
それに対して、一度のシャッターで一コマの写真を撮影する方法を「シングルショット」といいます。
「はぁ?それって当たり前でしょう!」と言う声が聞こえてきましたが……
そのとおりでございまして、シングルショットはあまりにも当たり前すぎて、死後となっています。
カメラのカタログにも、当たり前過ぎて記載されていませんよね。
さてデジタルカメラの黎明期には、R・G・B各色ごとにそれぞれシャッターを切って、計3回撮影する方式が珍しくなかったのです。
そして撮影後に合成して、一コマのデジタルカラー写真を作り出すカメラがありました。
それらは「マルチショットカメラ」と呼ばれ、今でも一部のモデルが発売されています。
当然動く被写体は、3回シャッターを切る間移動してしまいますので、スタジオでの静物撮影などにしか使えません。
しかし、マルチショットはベイヤー配列のイメージセンサー(撮像素子)を採用する必要がありません。
一度のシャッターで、R・G・B3色を同時に記録する必要が無いからです。
その結果ベイヤー配列の最大の欠点である、モアレや偽色の発生が起きないという利点があります。
その上、R・G・B3色全てにおいて、イメージセンサー(撮像素子)の有効画素が100%使えるので、とても解像感の高い画質が得られるのでございます。
ところで最近は「マルチショットノイズリダクション」という機能の付いた、デジタルカメラがございます。
この機能は、R・G・B各色をそれぞれ撮影してカラー写真を作り出すマルチショットとは、目的が全然違います。
夜景や暗い室内での三脚無しの手持ち撮影で、長時間露光を避けて手ブレと長時間露光ノイズを抑えるのが目的なのでございます。
マルチショットノイズリダクションの使い方は、まず手ブレを起こさない高速シャッターで瞬時に複数枚手持ち撮影します。
その直後に、それらの画像をカメラ内で合成して、長時間露出に匹敵する露出を稼ぐ仕組みです。
マルチショットした一枚一枚の画像は、手ブレも起こしてなく、長時間露光ノイズもありません。
それらの画像を合成するので、完成した写真にもブレとノイズが見られないというワケです。
なおHDR合成のための段階露出を行うブラケット撮影も、広義に捉えればマルチショットと言えるのではないでしょうか?