オンチップマイクロレンズとは、イメージセンサー(撮像素子)の各画素(ピクセル)上に集光のために取り付けられた凸レンズです。

イメージセンサー(撮像素子)の何百万個という画素(ピクセル)一つ一つに、気の遠くなるような小さな凸レンズが被せてあるのでございます。

実際は、イメージセンサー(撮像素子)サイズのシート上に、画素サイズの凸レンズが碁盤の目のように並んでいるのですが、ずれないように取り付ける行程もこれまた大変ですね。


いったいどうしてこんなに小さな凸レンズを、画素(ピクセル)一つ一つに被せなくてはならないのでしょうか?

それには、イメージセンサー(撮像素子)の、ある事情を説明しておかなくてはなりません。

一般にイメージセンサー(撮像素子)って単純に画素(ピクセル)が碁盤の目のように並んでいると思われがちですが、実はもっと複雑な構造をしているのでございます。

各画素(ピクセル)ひとつひとつの中心には、光の強さを電荷に変える受光素子があります。

そしてその受光素子が光を感じて作り出した電荷を取り出すために、周辺には電極が配線してあるのです。

凄く邪魔なのですが、この配線が無ければ画像をイメージセンサー(撮像素子)から取り出すことができないのでございます。

おまけに電極の配線は結構な厚みがあるので、受光素子は四方を配線の壁に取り囲まれている状態なのです。

その結果、受光素子は、画素(ピクセル)の一番暗い底の部分で光を受ける事になります。

建物に例えると、受光素子は四方を高層ビルに囲まれた日当たりの悪い戸建と言う事なのでございます。

業界では、この状態を「井戸の底」と呼んでいるのですが、なるほどですね。

つまり、この「井戸の底」の受光素子に光を集めるために、オンチップマイクロレンズと呼ばれる集光用凸レンズが必要になるのです。

オンチップマイクロレンズ

3画素分の断面図です。オンチップマイクロレンズのおかげで、画素面積いっぱいの光を取り込むことができるのです。

実際は、オンチップマイクロレンズは、イメージセンサー(撮像素子)の一番高い位置(撮影レンズ側)に取り付けられています。

撮影レンズから入って来た光が、オンチップマイクロレンズにより、画素(ピクセル)の受光素子上に集められるのは……

ちょうど虫メガネで太陽光を集めて紙に火を付けるのと同じ状態になるのでございます。

ちなみに、オンチップマイクロレンズの直ぐ下の層には、RGBの原色フィルターが配置されるのが一般的です。

各画素(ピクセル)の底にある受光素子には、オンチップマイクロレンズで集光され、RGBの原色フィルターで色分解された熱々の光が届くのです。

余談ですが、一部の太陽熱発電(太陽光発電ではない)ソーラーパネルでは、各セル上に集光用凸レンズが付いたモデルもあるそうでございます。


さて、最近のデジタルカメラの高画素化により、画素(ピクセル)ひとつひとつのサイズが小さくなって来ていますね。

ところが受光素子のサイズよりも大きめの、配線部分まで含むサイズのオンチップマイクロレンズを使うと、見かけ上の開口率を大きくできるのです。

さらに、オンチップマイクロレンズで集光効果を上げて、受光素子にたくさんの光を届けることで、撮像感度の低下も防げるのでございます。

それにより、電気的に感度を増幅するよりも、結果的に画像のノイズを少なくできるのです。

このように、高画素化した現在のデジタルカメラには、オンチップマイクロレンズは、なくてははならないものなのです。