許容錯乱円とは、ピントが合っている様に見えるか、またはボケている様に見えるかの判断に使われる、計算上の円です。

名前だけ見ると、精神医学用語の様ですが、れっきとした写真用語です。


ピントは、計算上では画面上の1点(面)にしか合わないはずなのです。

正確にはピントは点ではなく面で合います。

イメージセンサー(撮像素子)面上から同じ距離の面以外はピントが合っていないのです。


ところが実際どうでしょうか?

手元のスマートフォンで写真を撮ってみると、画面上のほとんどがピントが合った状態ではないでしょうか?

でも実際はピントが合っているように見えているだけで、やはり1点(面)にしかピントが合っていないのです。


これは一体どういうことでしょうか?

「そんなばかな」と思われた方は、その画像どんどん拡大してみて下さい。

画像のシャープさがだんだんなくなってきて「うーーーん!そう言われれば、ピントが合ってるのかボケているのかよくわからん」という状態になってきたのではないでしょうか?


何度も繰り返しますが、本当のピントは1点(面)しか合っていないわけで、他の部分はピントが合っているように見えているだけです。

このように見る環境や主観によって、ピントが合っているように見えたり、見えなかったりでは困りますよね。

そこで、どこまでがピントが合ってるか合っていないのか、この際ハッキリさせようじゃないかと創られたのが「許容錯乱円」という計算上の架空の円です。


そして「許容錯乱円」よりもピントのボケ幅が小さければ、「ピントが合っている様に見えることにしましょう」と言うルールにしました。

この状態を、専門用語で「被写界深度内」と言います。

反対に「許容錯乱円」よりもピントのボケ幅が大きれば、「ピントが合っている様に見えないことにしましょう」と言うルールにしました。

この状態を、専門用語で「被写界深度外」と言います。

つまり「被写界深度」とは「許容錯乱円」を元に求められた、「計算上のピントが合ったように見える範囲」なのです。


ところで実際の許容錯乱円は、どの位の大きさなのでしょうか?

かってフィルム時代には、35mmフィルムの粒子の大きさと、A4位に引き伸ばしたプリントでの鑑賞を前提に、0.026ミリから0.03ミリ程度で定義されていました。

ところが最近のデジタルカメラは高画素化が進み、写真の鑑賞方法もピクセル等倍でモニター鑑賞したり、A3サイズ以上のプリントで鑑賞することも多くなりました。

そこで許容錯乱円も従来からの見直しを迫られ、各メーカーがそれぞれのイメージセンサー(撮像素子)の画素サイズに合わせた許容錯乱円を設けています。

そしてその値を、ホームページ上で公開しているメーカーもあります。


許容錯乱円の大きさがイメージセンサー(撮像素子)の画素サイズによって変わるのは、許容錯乱円の大きさが画素サイズと同じか、それ以下になってしまうと、ピントのボケ幅ではなくピクセル(画素)を見ていることになってしまうからです。

そこで一般に、許容錯乱円は画素サイズよりもやや大きいサイズなっているのでございます。

なおコンパクトカメラは画素サイズはとても小さいので、スマートフォンにおいては許容錯乱円が0.008ミリしかないのでございました。

だからどこまでもピントが合っているように見えるのでございます。