トマソンとは?赤瀬川原平さんが発見した芸術上の概念です。

これはもう、ご本人の概念を抜粋させていただくのが一番でしょう。

トマソンと言うのは、いわば路上で見つかる無用の長物。それも建築物の一部で、もはや役立たずになったのに平然と存在しているもの。

例えば入り口を塞がれてしまった階段とか、窓を塞がれてなお残る庇(ひさし)とか。

新 正体不明~写真を撮る理由の増大(東京書籍)赤瀬川原平著より

なるほどですね~トマソンは正式には、頭に「超芸術」をつけて「超芸術トマソン」と言います。

「超芸術」と言うのは、存在がまるで芸術のようでありながら、その役にたたなさや非実用において、芸術よりももっと芸術らしい物だそうです。

「超芸術」の特徴は、つくる側が超芸術だと思ってつくるのではなく、鑑賞する側だけが超芸術だと思うことです。

さすが芸術、奥が深い世界ですね。


ところで「トマソン」の語源とはいったい何なんでしょうか?

これはもう全くの想定外で、読売ジャイアンツ元選手のゲーリー・トマソンから来ているそうです。

トマソンは、元大リーガーとして移籍後、最初の1年目は活躍しましたが、2年目以降は全く役立たずにも関わらず四番バッターとして居座っていたそうです。

その姿がちょうど「不動産に残された無用の長物」という、「超芸術トマソン」の概念と一致したため名付けられたそうです。

命名まで芸術的ですね。


事の始まりは、創作のスランプに陥っていた赤瀬川原平さんが、1972年に路上でふっとそーゆー物件(作家が作らなくても、知らずにできてしまった妙な物件)に気づいたからだそうです。

それ以来、赤瀬川原平さんは街を探し歩くのが面白くなり、自分で作るのではなく見つけるのだから、記録する必要に迫られてカメラを手にし始めたそうです。


ちなみに「超芸術トマソン」は、80年代には社会現象とまで言えるほどの大ブームとなり、「路上観察学会」というものまで結成されました。

残念ながらその後「超芸術トマソン」は下火となりましたが、現在ブームとなっている「お散歩写真」の先駆けだったのではないでしょうか。