ビネガーシンドロームとは、フィルムが長期保存中にワカメの酢の物に変わっていくという不思議な現象です。
といいいましても、このワカメの酢の物、良い子は食べてはなりませぬ。
実はこのワカメの酢の物のネタを明かせば、一昔前に主流だったフィルムベース素材TAC (トリアセチルセルロース)が、湿気や熱によって化学変化を起し酢酸化してしまう現象だったのでございます。
その影響でフィルムは丸まって固く変質して、まるでワカメの様相になってしまうのであります。
現在世界中で、TACベースのマイクロフィルムで撮影された大量の公文書が複写保存管理されております。
半永久保存を目的にマイクロフィルムに収められたこれらの文章は、今後一体どうなるのでございましょうか?
一度化学変化を起こしたフィルムは元には戻りませんので、少しでも早急に温度20℃・湿度50%以下の環境で通気性のある場所に移して延命を図るべきでございます。
尚、1990年代からフィルムベースの素材は、劣化が少ないとされるポリエステルフィルムに変わっております。
さらに現在では、より強く長持ちするPET(ポリエチレンテレフタレート)が主流になりつつあるあるのでございます。
APS(アドバンストフォトシステム)で使用されるIX240規格のフィルムは、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂がベース素材として採用されていますので、ビネガーシンドロームの心配は無いとされています。